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「責任ある研究活動」を実現するための研究データ管理の考え方
 付 電子ラボノート実装ガイドライン

 長年にわたり研究者支援を行ってきた著者が,研究不正が成立してしまう3要素に注目し,
  研究倫理と研究公正の両面から「責任ある研究活動」を行う秘訣をわかりやすく解説!
 研究者が研究不正に陥らず,研究に没頭できる環境づくりの道標となる1 冊!
 望ましい研究データ管理のための「電子ラボノート実装ガイドライン」付き!


  著 者:飯室 聡(国際医療福祉大学)
  定 価:3,300 円(本体3,000 円+税10%)
  判 型:A4 判 2 色刷り 88 頁
  発 行:2024 年3 月25 日
  ISBN978-4-906844-24-1 C3047 ¥3000E

 

 

 


目次

 推薦の辞
 はじめに

第1部 基本的な考え方

 第1章 責任ある研究活動
  1-1 研究はなぜ管理しなくてはならないのか
  1-2 研究者の目指すべきところ~責任ある研究活動~
  1-3 RCR とは何か(1)~ FFP でもなくてQRP でもないもの?~
  1-4 RCR とは何か(2)~ Research ethics(研究倫理)とResearch integrity(研究公正)~
  1-5 FFP とQRP の発生機序
  1-6 研究データサイクルと品質管理
  コラム1 IT 技術の進歩と研究プロセスのブラックボックス化
  コラム2 特定不正行為FFP に該当しさえしなければよいのか

 第2章 研究の公正性
  2-1 研究公正とは何か
  コラム3 倫理と公正 身近な例で考えてみよう
  2-2  研究公正の観点から考える研究不正~研究の公正性を担保するためのターゲットはどこにあるのか~
  2-3 研究データ管理の目的から見た電子ラボノートの位置づけ
  コラム4 研究データの公正性をめぐる2 つの原則
  コラム5 GCP とER/ES 指針

 第3章 電子ラボノート導入
  3-1 電子ラボノート導入の目的〜研究とリスクマネジメント〜
  3-2 電子ラボノートで実現すべき原則
  コラム6 論文のリトラクトということ
  コラム7 電子ラボノート(ELN)導入に寄せられる幻想

第2部 電子ラボノート実装ガイドライン

 第4章 電子ラボノート実装
  4-1 概略
   4-1-1 一般論とその適用ということ
   4-1-2 研究支援者として提供する研究基盤のレベル
   4-1-3 ステークホルダーの確認
   4-1-4 研究者の立場から
  4-2 電子ラボノート実装前の準備~研究機関および研究支援者側で確認すべきこと~
   4-2-1 各機関/ 大学における研究データポリシー、研究ガイドラインの確認
   4-2-2 機関/ 大学内ステークホルダーの確認
   4-2-3 データポリシーを踏まえた上でのデータ管理レベルの設定と基盤整備
   4-2-4 当該機関/ 大学で実施される研究の種別の確認
  4-3 ラボへの実装に際して~研究者の作業~
   4-3-1 機関/ 大学およびラボにおける既存の規定の確認
   4-3-2 ラボにおける研究活動の把握
   4-3-3 ラボにおける研究活動の領域および発生するデータの種類とその構造の把握
   4-3-4 ELN の要件と選定
  4-4 運用中の注意点
  4-5 スタッフの異動、研究室のクロージングに際して
  コラム8 退職した研究者への疑義に研究機関は対応しなくてはならない

 第5章 付録 電子ラボノート実装のためのチェックリスト

 おわりに
 索引



「はじめに」より 抜粋

(抜粋)
 ほとんどの研究者は「研究不正をしてやろう」などとは考えていないはずです。特に、FFP(捏造、改ざん、盗用)と称される特定不正行為を意図的に行おうという研究者はいないと筆者は信じています。もしいるとすれば、その方は「研究者」ではないのでしょう。研究という場を用いて、別の目的を達成したい人なのではないでしょうか。また、現在ほど研究倫理教育が充実している状況であれば、「その行為がFFP に該当するとは知らなかった」では済まされません。加えて、限りなくFFP に近いようなQRP も存在しています。「不適切なオーサーシップ」や「二重投稿」が大きな問題となりつつあるのはご存知の通りです。
 筆者は長年に渡って研究者支援をしていますが、不幸にして研究不正が疑われる事案に遭遇する時があります。そうした場合であっても、その事象の多くはFFP や限りなくFFP に近いようなQRP ではなく、いつも通りに「(本人の意識としては)誠実に」研究活動を行った結果の産物、あるいはうっかりミスや研究者本人はあくまで「善意から」やってしまった行為なのではないかと筆者は考えています。そのような状況に陥ってしまった時に、どうすれば自らの研究の公正性を主張できるのか、どうやったら公正性を目指して再起できるのか、といったことについて、それらを可能にするための考え方を身につけて欲しいと思います。

2023年冬

国際医療福祉大学
飯室 聡